美しいメロディにだまされそうになりますが、これは悲恋の歌です。
一人何も考えられず家に帰る。
彼女は相手を想うけれど、同時に彼女は、彼が自分を想っているとは思っていない。
もし会えるのなら1,000マイルだって歩くけど、そんな想いを相手に知られたくはない。
でもあまりに好きだったから、どうしても忘れられない。
だからもし今会えるのなら、なんだってできる。なんだってできるのに。
そんな失恋、もしくは叶わない恋の歌です。
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文法解説 Vanessa Carlton – A Thousand Miles
Makin’ my way
make one’s way ~で「~に向かう」です。
make your way
https://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/make-your-way
to start moving towards a place
We made our way to the front of the crowd.
homebound
homebound は「家へ移動している」です。
home·bound
https://www.thefreedictionary.com/homebound
Moving or traveling homeward.
よく駅のアナウンスで「○○行き」のことを bound for ○○と言っていますが、あの bound です。
bound には元々「縛られている」という意味があり、そこから「確かだ」とか「法的な義務がある」などという意味が派生しています。
「○○行き」の bound for も、行き先が決まっているので「縛られている」と言えなくもないですよね。
ですので余談になりますが、homebound には、「家に閉じ込められている」というような意味もあります。
オリジナルの「縛られている」という意味を押さえて bound という単語を覚えることで、「確かだ」「法的な義務がある」「○○行き」と暗記しなくても、意味が分かるようになれます。
こうすれば、効率的に英語が話せるようになります。
Starin’ blankly ahead
stare は「視線を固定する」です。
look との違いは、look が能動的に見ようとしているのに対して、stare はただ1箇所を見ているだけで、必ずしも何かを知ろうとしたり見つけようとしたりしていない点です。
stare
To look fixedly (at something).look
To try to see, to pay attention to with one’s eyes.
https://wikidiff.com/stare/look#:~:text=As%20verbs%20the%20difference%20between,attention%20to%20with%20one’s%20eyes.
blank は「空っぽ」という形容詞。
blanklyで副詞になって、「空っぽに、うつろに」と動詞 stare を修飾しています。
Starin’ blankly ahead「ぼんやり前を見ている」状態なので、look がそぐわないのが分かります。
何かほかの事に興味を向けるようなパワーもなく、虚ろに何を見るでもなく人ごみを抜けて家へ帰る。
彼の家へ向かうような態度ではないし、his home と言っていない以上、ただ home と言えば自分の家に向かっている以外の表現ではありえません。
ここだけ見ても、盛り上がっている恋愛の歌ではないことがわかります。
time would pass me by
pass by は「通り過ぎる、追い越す」です。
If an event or opportunity passes you by, you do not notice it, or get any pleasure or advantage from it:
https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/pass-sb-by?q=pass+by
Do you ever feel that life is passing you by?
would は仮定法で、現実とは違うことや、実際にはやろうと思っていないことを話すときに使います。
time passes me by「時間が自分を追い越す」ことは現実にはありえないので、would を使って仮定の話にしているわけです。
ここからは解釈の話になりますが、歌い手は時間が自分を追い越して欲しいと思っています。
それはなぜでしょうか?
僕としては、相手が恋しくてつらいので、知らない間に時間だけが過ぎて、相手のことを忘れられればいいのに、時間がはやく過ぎてくれればいいのに、という気持ちが込められていると考えます。
あなたはどう思うでしょうか。
こういうことを考えるのも、歌を聴く楽しみの一つですよね。
I’d walk a thousand miles
I’d は I would の略です。
I had の場合もありますが、後ろに walk と動詞の原型がきているので、前は助動詞の would であるという判断ができます。
had であれば、walked と過去分詞になっていなければいけません。
この would も仮定です。
1,000マイルは1,600キロなので、もし本当に歩いたとしたら1ヶ月以上かかります。今夜会うのに間に合うわけがありません。
だから、歌い手は歩くつもりで言っているわけではなくて、「あなたに会えるならどんな苦労も厭わないのに」という、気持ちの大きさを表しているにすぎません。
次の could も同じ仮定です。
なお、could と would の違いは、could は「可能性/できる」、would は「意思/つもりがある」の意味がそれぞれ文章に込められている点です。
「あなたに会えるならどんな苦労も厭わないのに」「あなたに会えるなら1,000マイルだって歩くつもりがあるわ」というように would をとらえましょう。
If I could just see you
could は「可能性」の話をしているので、「もし~できるなら」という含みがあります。
そして、仮定なので、本当に会えるとは思っていません。
「もし~できるなら(できるとは思っていないけど)」という文全体の意味になります。
If I can just see you であれば、「ちらっとでも会えるなら(あなたのオフィス前にでも寄ろうかな)」のような、交際しているカップルの、実際に会うつもりの段取りの会話にもなるでしょう。
同様に、fall into the sky 「空の中に落ちる」も仮定の could でありえないことを言っています。もしそんなありえないことが起きたならばと、仮想の願望を述べており、これは意味を理解すると言うより好きにイメージすればいい部分でしょう。
これらの仮定を理解すれば、ハッピーなラブソングには聞こえなくなってくるのではないでしょうか。
if you ever think of me
ever は辞書には、at any time in the past, present, or future とあります。
イメージにするとこんな感じです。
歌詞では現在形で ever が使われています。
現在形は、習慣や、普段からしていることを言うときにつかいます。
例えば日本語でも、「俺サッカーやるよ」「あたし洋楽聴くよ」と言えば、あるていど時間の幅があることに気づいてもらえると思います。
1週間前もサッカーをやったし、たぶん来週もやるだろう、という時間の幅です。
現在形の ever は、その時間の幅の全部を ever と言うのです。
I wonder if you think of me と ever が無かったとすると、「あなたが私のことを考たりするのか疑問だ」「あなたは私のことを考えたりするのかなぁ」と、よくも悪くもとれる文章になり、ニュアンスは文脈により傾くことになります。
ですがここに ever が入ると、「その期間に一度でも」と強調されます。
ever
used for emphasizing that something has never happened before or should never happenDon’t ever do that again.
https://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/ever_1
It was the only serious question he had ever asked me.
ですので、I wonder if you ever think of me で「あたしのことを一度でも考えることがあるのか疑問だ」⇒「あなたがあたしのことを想うことがあるとは思わない」と、悪いほうへ大きく傾いた文章になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
曲のイメージは大きく変わったでしょうか、想像通りだったでしょうか。
叶わない恋だったとしても、それを素敵な経験にするのか、いやな思い出にしてしまうのかは本人次第だと思います。
この曲は、恨み言ひとついうわけでもなく綺麗に歌い上げられていて、悲恋を素敵な経験にしようとしている、その努力の最中であるような気がします。
さわやかで素敵な曲には違いなく、僕は好きな歌です。
当サイトの解釈が気に入ってもらえたら、訳をみながら繰り返し動画にあわせて歌ってみてください。
英語の意味がだんだんなじんできて、英語力も向上していくことと思います。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。